(´;ω;`)ブワッ


by nakieiga
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ブラックブック(1)

ポール”変態”バーホーベン監督作品。

舞台は1944年9月、第二次大戦中のオランダ。ドイツ軍の占領下にあったが、同年6月に連合軍は大陸反攻作戦(『史上最大の作戦』『プライベート・ライアン』)を実施、8月にはパリを解放していた。オランダまであと一歩、という距離だが、モンゴメリー主導で行われたマーケット・ガーデン作戦(『遠すぎた橋』)は大失敗、結局オランダの大半は戦争が終わるまでドイツ軍に支配されたままだった。

ユダヤ人女性ラヘルは隠れ家で暮らしていたが、連合軍の爆撃機が投棄した爆弾により焼け出されてしまう。親兄弟、その他のユダヤ人とともに連合軍に解放された南部へ逃れようとするが、手配してもらった運河船がドイツ軍の待ち伏せに遭い、ラヘルを除いて全員が射殺されてしまった。

難を逃れた彼女はレジスタンスに助けられ、女性工作員としてドイツ軍諜報部のムンツェ大尉に接近する。

これはオランダ人による、オランダ人のための、第二次大戦を再考するための物語なのだろう。占領軍に協力する者がいて、それに抗う者がいた。ユダヤ人を助ける者がいて、ユダヤ人をナチスに売り渡す者がいた。それで私服を肥やす者もいれば、仲間を裏切る者もいた。そのいずれもがオランダ人である。

やがて連合軍が進駐し、占領者と被占領者の立場が逆転すると、人心はこうも簡単に変化するものかと驚かされる。それまで虐げられてきた者たちが強権をふるい、ドイツ軍協力者を吊るし上げる。しかし、実はそれこそがナチズムの姿であり、先日まで不況に喘いでいた床屋の親父が翌日にはナチスの将校になって威張り散らすという、醜悪な人間性の発露である。そう、ナチズム(に象徴される非人間性)は特殊なものではなく、誰もが飼っている怪物みたいなものだ。いつ皮膚を食い破って表に出ようかと、常に機会をうかがっている。

とまあ、そんなことを嫌でも考えさせられる。

『スターシップ・トルーパーズ』では、予算不足じゃなく、人体がバラバラにされるシーンを撮りたかったからパワードスーツを出さなかったんじゃないか、と噂されるバーホーベンらしいマニアックなシーンが多い。わざわざ「毛」を染めるシーンを入れたり、薬剤が染みたり、ヒロインを汚物まみれにしたり。そうした執拗な演出の積み重ねが、効果的に働いているとは思うが。

冒頭で気づくべきだったが、実に皮肉なエンディングであり、観終わった後にハッピーになれるタイプの映画ではない。しかし144分という上映時間を長く感じさせない巧さがあり、劇場を出てからもいろんなことを考えてしまう、良い作品であることは間違いない。

★★★★(かなり満足)
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by nakieiga | 2007-04-08 01:50 | 映画