大いなる助走/筒井康隆
2007年 04月 24日
『巨船ベラス・レトラス』と併せて読みたい一冊。『巨船~』が現在の文学界全体における憤りをぶつけたものであるなら、『大いなる~』は文学賞に対する私怨をエネルギーに、最後まで駆け抜けている。筒井康隆は直木賞を取り損ねたのである。
地方都市の同人に新人が参加。彼は勤務している大企業の内幕を描く暴露小説を書き、それが文芸誌の目に留まり、何と直升賞候補に推薦される。しかし、作品が優れているからというだけですんなりと賞が獲れるものではない。あの手この手で審査員を味方につけなければならないのだ。
同人でくすぶっている文学崩れの連中や、文学界に巣くう魑魅魍魎をこれでもか、とカリカチュアライズ。『巨船~』でもそれが面白かったが、『大いなる~』の私怨パワーはそれをはるかに凌ぐ。
書かれていることがフィクションだと思えないのは、惚れた女を取られた私怨で東野圭吾の直木賞受賞を妨害し続けてきた老害がいるから。散弾銃で撃たれても気づかないかもね、鈍感力の持ち主だし。
抱腹絶倒モノではあるが、根底には文学に対する真摯な姿勢がある。それは『巨船~』とも通底するところである。それは批判に対する予防線などではなく、筒井康隆の姿勢そのものだと感じた。
★★★★(もう一回読もう)
地方都市の同人に新人が参加。彼は勤務している大企業の内幕を描く暴露小説を書き、それが文芸誌の目に留まり、何と直升賞候補に推薦される。しかし、作品が優れているからというだけですんなりと賞が獲れるものではない。あの手この手で審査員を味方につけなければならないのだ。
同人でくすぶっている文学崩れの連中や、文学界に巣くう魑魅魍魎をこれでもか、とカリカチュアライズ。『巨船~』でもそれが面白かったが、『大いなる~』の私怨パワーはそれをはるかに凌ぐ。
書かれていることがフィクションだと思えないのは、惚れた女を取られた私怨で東野圭吾の直木賞受賞を妨害し続けてきた老害がいるから。散弾銃で撃たれても気づかないかもね、鈍感力の持ち主だし。
抱腹絶倒モノではあるが、根底には文学に対する真摯な姿勢がある。それは『巨船~』とも通底するところである。それは批判に対する予防線などではなく、筒井康隆の姿勢そのものだと感じた。
★★★★(もう一回読もう)
by nakieiga
| 2007-04-24 09:02
| 読書